爬虫類イベントで生体を迎えた。ここで終わりではありません。家に着くまでが、その子にとって一番の負担です。
会場に来る人の多くは、電車やバスで移動します。それなのに、持ち帰りについてまとまった情報はほとんど見当たりません。
とくに危険なのは夏です。理由は後で詳しく書きますが、冬より夏のほうが取り返しがつきません。
この記事では、会場での梱包の確認から、季節ごとの温度対策、電車での運び方、家に着いてからの扱いまでを順に書きます。鉄道の持ち込みルールについても、私が長いあいだ知らずにやっていたことを含めて触れます。
会場での準備|まず店舗の梱包を確認する
ここからは実務の話です。
まず知っておいてほしいのは、生体はほとんどの店舗が持ち帰れる状態で梱包してくれるということです。プリンカップやデリカップに入れ、段ボールに収め、季節によってはカイロも同封してくれます。
私はその梱包で十分だと判断できれば、そのまま持ち帰ります。容器を自分で用意して助かった、という経験はほとんどありません。
確認するのは次の3点です。
- 箱がしっかり閉じているか。移動中に開かないか
- 中で容器が動かないか
- 季節に対して、保温・保冷が足りているか
不安があれば、その場で店員さんに聞いてください。「電車で1時間かかります」と伝えれば、それに合わせてくれます。店側も、弱らせたくないのは同じです。
私が持っていくもの
イベントには必ずリュックで行きます。両手を空けたいからです。
中身はこれだけです。
| 持ち物 | 用途 |
|---|---|
| 保冷バッグ | 夏の暑さ、冬の冷えの両方に効く。断熱が目的 |
| カイロ | 冬の保温。貼る位置に注意 |
| 中が透けないエコバッグ | 紙袋をくれない店舗もある |
| 財布・飲み物 | 会場は長丁場です |
保冷バッグは100円ショップのもので十分です。私はダイソーで買ったものを使っています。エコバッグもIKEAやニトリの大きめのもので足ります。ここにお金をかける必要はありません。
大事なのは値段ではなく、中が透けないこと。帰りの電車で爬虫類用品や生体の箱が丸出しだと、正直に言って少し気まずい。周囲への配慮でもあります。
夏がいちばん怖い
持ち帰りで最も危険なのは、冬ではなく夏です。
理由は単純で、取り返しがつかないからです。冬の寒さで起きるのは、基本的に代謝が落ちることです。一方、夏の高温は短時間で致命的になります。
そして箱の中は、外気温より高くなります。閉じた容器に日が当たれば、内部の温度は想像以上に上がる。車内に置き去りにされたペットの話と、起きていることは同じです。
危ないのは電車の中ではなく、その前後
電車の中は冷房が効いています。問題は会場から駅まで、駅から自宅までの徒歩です。
やることは3つだけです。
- 保冷バッグに入れる。冷やすためではなく、外の熱を遮断するため
- 直射日光に当てない。日陰を選んで歩く
- 寄り道をしない。これがいちばん効きます
夏のイベントの帰りに、買い物や食事に寄りたくなる気持ちは分かります。ただ、その1時間が一番危ない時間です。
冬の失敗は「寒すぎ」ではなく「熱すぎ」
冬は夏ほど怖くありません。だからといって油断していいわけではなく、冬には冬の失敗があります。
それがカイロの貼りすぎです。
寒いと心配になって、カイロを何枚も貼ってしまう。ところが保冷バッグの中は断熱されているので、熱がこもります。寒さを心配した結果、熱すぎる箱を作ってしまう。これが冬の典型的な失敗です。
カイロは、保冷バッグの内側の側面に貼る
私のやり方はこうです。
カイロは容器に直接貼らず、保冷バッグの内側の側面に貼ります。こうすると熱が横から回り込む形になり、局所的に熱くなりません。
容器に直接貼ると、貼った面だけが高温になります。生体はそこから逃げられません。側面に貼るだけで、この問題は消えます。
もう一つ。カイロは酸素で発熱します。完全に密閉すると発熱が止まるので、空気が入る余地は残してください。
店舗がすでにカイロを同封してくれている場合は、その上から保冷バッグで包むだけで十分なことが多いです。足し算をしすぎないでください。
電車で持ち帰る前に|鉄道のルールはグレーです
正直に書きます。私は爬虫類を電車で持ち帰ったことがありますが、手回り品料金を払っていませんでした。犬や猫を連れて乗るときに必要なもので、爬虫類には関係がないと思っていたからです。
調べてみたら、そうではありませんでした。
規則には、こう書かれています
JR西日本の旅客営業規則を確認しました。第307条で、動物は原則として車内に持ち込めないと定められています。例外として認められているのは、次のものだけです。
- 少数量の小鳥・小虫類・初生ひな・魚介類を容器に入れたもの
- 身体障害者補助犬、盲導犬
- 第309条により、持込みの承諾を受けた動物
爬虫類は「小鳥・小虫類・魚介類」ではありません。つまり、3番目の「承諾を受ける」しか道がないということです。
その第309条には、こう書かれています。
小犬・猫・はと又はこれらに類する小動物(猛獣及びへびの類を除く)
条件は次のとおりです。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 容器の長さ | 70cm以内 |
| 縦・横・高さの合計 | 90cm程度 |
| 容器を含めた重量 | 10kg以内 |
| 手続き | 持込区間・持込日を申し出て、承諾を受ける |
| 料金 | 1個につき290円 |
さらに第307条では「不潔又は臭気のため、他の旅客に迷惑をかけるおそれがあるもの」も持ち込めないとされています。
ヘビは「除く」と明記されています
条文をもう一度見てください。「猛獣及びへびの類を除く」とあります。
これは解釈の余地がありません。ヘビは、規則上そもそも持ち込みの対象外です。グレーではなく、明確に書かれています。
カメやトカゲは「書かれていない」
では、リクガメやレオパ、フトアゴはどうか。
条文にあるのは「小犬・猫・はと又はこれらに類する小動物」という表現だけです。爬虫類が「これらに類する」に当たるかどうかは、規則に書かれていません。
つまり、判断するのは駅の係員です。承諾されるかもしれないし、されないかもしれない。ここが本当のグレーゾーンです。
申し出たら、断られるかもしれない
正直に書きます。だから多くの人が、申し出ないのだと思います。私もそうでした。
申し出れば断られる可能性がある。黙っていれば、まず気づかれない。合理的に考えれば、黙っているほうが「得」です。
それでもこれを書くのは、知らずにやっているのと、知ったうえで判断するのとでは、まったく違うと思うからです。
爬虫類の飼育は、まだ広く理解されているとは言えません。車内で容器から生き物が出た、臭いが漏れた。そんなことが一度起きれば、次に困るのは私たち全員です。ルールを知らずに持ち込む人が増えるほど、この趣味は肩身が狭くなっていきます。
だから最低限、中身が見えず、匂いが漏れず、絶対に開かない状態で運ぶ。これは規則以前の話として、守るべきだと考えています。
ショップも、一声かけるべきだと思います
守るべきなのは買った本人です。それは大前提として、売る側からも一言あっていいのではないかと思っています。
ペットショップが犬を売るとき、自治体への登録と狂犬病予防注射を案内します。生き物を売る側が、飼い主が守るべきルールを伝える。それと同じことです。
とくにヘビは、規則で明確に持ち込めないと書かれています。それを知らないまま電車に乗る人は、決して少なくないはずです。
電車ですか? ヘビは鉄道に持ち込めないので、お車かタクシーでお願いします。
この一言に、コストは一円もかかりません。それで防げることがあります。
もし車内でヘビが逃げ、列車が止まったら。その損害は、個人が背負えるような金額ではありません。そして報道されれば、爬虫類そのものの印象が変わります。困るのは、売る側も買う側も同じです。
鉄道会社によって規則は違います
ここまで引用したのはJR西日本の規則です。JR各社、私鉄、地下鉄で、それぞれ規則も料金も異なります。会社をまたいで乗る場合はなおさらです。
この記事の内容をそのまま鵜呑みにせず、ご自身が使う路線の規則を必ず確認してください。各社の公式サイトに「手回り品」の項目があります。
電車の中でのふるまい
- 箱を膝の上か足元に置き、網棚に載せない。揺れと落下のリスクがあります
- 混雑する時間帯を避ける。押されると容器が潰れます
- 車内で中を確認しない。気になっても、家まで我慢してください
混雑を避けるという意味では、会場を出る時間も関係します。終了間際は用品店のレジも会場の出口も混みます。早めに切り上げるほうが、生体への負担は小さくなります。
会場での立ち回りについては「初めての爬虫類イベント完全ガイド」にまとめています。
家に着いてから
ここで一番やってはいけないのが、すぐに触ることです。
会場の音、移動の揺れ、温度の変化。その子にとっては、この数時間が人生で最大級のストレスです。ケージに移したら、そっとしておいてください。餌を食べなくても、初日は普通です。
そしてケージは、イベントに行く前に完成させておくべきです。帰ってきてから組み立てるのでは、その間ずっと箱の中で待たせることになります。
飼育用品を事前に揃えておく理由は「爬虫類イベントを120%楽しめない人の共通点」に書きました。持ち帰りのことを考えても、大きい物は先に買っておくほうが確実です。
何を揃えるかは、迎える種で変わります。お迎えが決まっているなら、行く前にこのあたりを見ておいてください。
- レオパを迎えるなら|「レオパの初期費用は1万円から4万円」で必要なものを確認し、冬なら「レオパの適温は28〜30℃」もあわせて
- リクガメを迎えるなら|「リクガメの初期費用」と「リクガメに必要なライトは3種類」。ライトは当日に間に合わせにくい用品です
- まだ種を決めていないなら|「爬虫類の初期費用はいくら?レオパ・フトアゴ・リクガメ3種を比較」
まとめ
- 鉄道への生き物の持ち込みは、原則禁止のうえで例外扱い。ヘビは規則で明確に対象外
- カメ・トカゲは規則に書かれておらず、係員の承諾次第というグレーゾーン
- 会社ごとに規則が違うので、自分が使う路線を必ず確認する
- 中身が見えず、匂いが漏れず、開かない状態で運ぶ。これは規則以前の話
- 生体の梱包は店舗に任せてよい。電車移動であることを伝える
- 夏がいちばん危ない。直射日光を避け、寄り道をしない
- 冬はカイロの貼りすぎに注意。保冷バッグの内側の側面に貼る
- ケージは行く前に完成させておく
電車で行くこと自体は、何も悪いことではありません。私も14年そうしてきました。ただ、知らないまま運ぶのと、知ったうえで気をつけて運ぶのとでは、まったく別の行為です。
開催予定は「爬虫類イベントカレンダー」にまとめています。
そして連れて帰ったあとが本番です。ケージがまだなら「爬虫類の初期費用」から、種ごとの必要なものを確認してください。




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