はじめに
リクガメの飼育環境について調べていると、ケージのサイズについて本当にいろいろな意見が見つかります。「この種類なら90cmで十分」という声もあれば、「最低でも120cmは欲しい」という声もある。調べても結局どの大きさが良いのか分からないという方が多いのではないでしょうか。
私はというと、可能な限り広いスペースを確保したいと考えて飼育を続けてきました。
ただ、誤解しないでいただきたいのですが、「広ければ良い」という単純な話をしたいわけではありません。広いだけで他の条件が整っていなければ、それはそれで問題が出てきます。
私が広さを重視している一番の理由は、広いことで環境に「自由」が生まれるからです。
今回はこの考え方について、一飼育者としての経験を交えながら書いてみたいと思います。これが正解だと言うつもりはまったくありません。「そういう考え方もあるのか」と、ケージ選びのひとつの視点として読んでいただければ嬉しいです。

私がケージの広さを重視する理由
そもそもの話になりますが、リクガメは自然界では広大な環境の中で生活しています。種類にもよりますが、乾燥した草原や荒れ地を一日に何百メートルも歩き回り、日向と日陰を行き来し、気に入った場所で休む。そんな生活をしている生き物です。
もちろん、家庭の飼育環境でそれを再現することは不可能です。どれだけ頑張っても、部屋の中に草原は作れません。これは認めるしかない事実だと思っています。
それでも私は、少しでも「選択肢のある環境」を用意したいと考えています。
完全な再現は無理でも、リクガメ自身が「今日はこっちにいよう」「ちょっと暑いからあっちに移動しよう」と選べる余地を残してあげたい。その余地を生み出すのが、ケージの広さだと考えているのです。
広いケージは環境に自由を生む
ここが今回一番お伝えしたい部分です。
ケージの広さの話になると、「運動不足にならないように」という文脈で語られることが多いように感じます。もちろん運動量の確保は大切ですし、それ自体は間違っていないと思います。
ただ、私が広さを重視する理由は、運動スペースの確保だけではありません。
温度勾配が作りやすくなる
リクガメ飼育では、バスキングスポットのような暖かい場所と、体を冷ませる涼しい場所の両方が必要だと言われています。いわゆる温度勾配です。
これ、狭いケージだと本当に難しいんです。
保温球やバスキングライトを設置すると、狭い空間ではケージ全体が温まってしまい、涼しい場所がほとんど作れない。逆に涼しい場所を優先すると、暖かい場所の温度が足りなくなる。狭さが原因で、温度管理がどっちつかずになってしまうことがあります。
ケージが広ければ、片側をしっかり暖めても、反対側には自然と涼しいゾーンが残ります。
レイアウトに無理が出ない
シェルター、水入れ、餌場。リクガメ飼育に必要なものを並べていくと、意外とスペースを取られます。
狭いケージだと、シェルターを置いた時点でもう歩くスペースがほとんどない、ということになりがちです。水入れがバスキングスポットの真下に来てしまったり、配置に妥協が必要になったりします。
広さがあれば、それぞれの設備を意味のある場所に置けます。暖かいエリア、涼しいエリア、隠れられる場所、水場。それぞれがきちんと役割を持った配置にできるのです。
生体自身が「居場所を選べる」
そして、これが私にとって一番大切なポイントです。
温度勾配があり、レイアウトに余裕があるケージでは、リクガメ自身が自分の居場所を選べます。
朝はバスキングスポットで体を温めて、体温が上がったら涼しい場所へ移動する。気分が乗らない日はシェルターにこもる。そういう「自分で選ぶ」行動が、広いケージでは自然と見られるようになります。
うちのリクガメを見ていても、一日中同じ場所にいることは少なく数時間ごとに居場所を変えています。
リクガメ飼育セットを見ると少し気になること
ペットショップやネット通販では、初心者向けのリクガメ飼育セットがよく販売されています。ガラスケージに、ライトや床材がセットになっているものですね。
必要なものが一式そろっていて、これから飼い始める方にはとてもありがたい商品だと思います。
ただ、ひとつだけ気になることがあります。
それは、リクガメは成長するということです。
お店で売られているベビーサイズのリクガメを見ると、60cmや90㎝ケージでも十分広く感じます。実際、ベビーのうちはそれで問題ないかもしれません。
しかし、例えば甲長20cm前後になる中型種の場合、成長した姿を想像してみてください。90cm×45cmのケージに甲長20cmのリクガメがいると、体の向きを変えて数歩歩けばもう壁、という感覚になります。温度勾配を作るにも、レイアウトを工夫するにも、かなり手狭です。
飼育セットはあくまで「スタートのための環境」であって、「一生過ごす環境」ではない。そのことを頭の片隅に置いておくと、後々の計画が立てやすくなるのではないかと思います。
ガラスケージに違和感を覚える理由
先にはっきり書いておきますが、私はガラスケージそのものを否定したいわけではありません。
ガラスケージは見た目が美しく、生体の観察もしやすい。インテリアとしても映えますし、爬虫類飼育の定番として長く使われてきただけの良さがあります。実際、立体行動をする爬虫類にはもってこいだと思います。
ただ、リクガメ飼育に限って言えば、飼育には向いていないと考えています。
なぜなら、閉鎖的な空間になりやすいからです。
自然界には、常に空気の流れがあります。風が吹き、空気が入れ替わり、よどむことがありません。リクガメはそういう環境で生きてきた生き物です。
一方でガラスケージは、構造上どうしても空気が滞留しやすい部分があります。前面と上部に通気口があるタイプでも、ケージの隅や床付近の空気は動きにくい。湿気がこもったり、温まった空気が抜けにくかったりすることがあります。
そして、十分なサイズが確保できない場合、先ほど書いた温度勾配も作りにくくなります。
空気は動かない、温度差も作れない。そうなると結果として、生体が環境を選ぶ自由がどんどん少なくなってしまう。私がガラスケージに違和感を覚えるのは、この点です。
繰り返しますが、これはガラスケージが悪いという話ではありません。十分な広さと通気を確保できるなら、ガラスケージでもまったく問題ないと思います。あくまで「私はこう考えている」という話として受け取っていただければと思います。
私が自作ケージを選んだ理由
現在、私は自作ケージでリクガメを飼育しています。
こう書くと「こだわりの立派なケージなのかな」と思われるかもしれませんが、理由は見た目ではありません。
一番の理由は、部屋の中で確保できるスペースを最大限活用したかったからです。
市販のケージは規格サイズで作られています。当然ですが、部屋の間取りに合わせては作られていません。「この壁際にあと20cm広いケージが置けるのに」という、もどかしい状況がどうしても出てきます。
自作ケージであれば、
- 部屋の形やスペースに合わせてサイズを決められる
- 規格にとらわれず、広さを最優先で確保できる
- 通気口の位置や数を自分で設計できる
というメリットがあります。
つまり私にとって自作は、「広さと通気という、自分が大事にしたい条件を実現するための手段」だったわけです。見た目は正直、市販のガラスケージのほうがずっときれいだと思います。

自作が難しい場合の選択肢
とはいえ、誰でも自作ケージを作れるわけではありません。
工具が必要ですし、作業するスペースも要ります。木材のカットや組み立てに慣れていないと、時間も手間もかかります。賃貸住宅では作業自体が難しいこともあるでしょう。
そこで私は、ガラスケージ以外の選択肢として、トロ舟や衣装ケースも十分候補になると考えています。
トロ舟は本来、左官作業などに使う容器ですが、爬虫類飼育では昔から使われてきた定番アイテムです。衣装ケースも、大型のものなら立派な飼育スペースになります。
正直なところ、見た目の豪華さはありません。部屋に置いたときの「映え」を求めるなら、ガラスケージには敵わないでしょう。
でも、
- 価格のわりに広い面積を確保しやすい
- 上部が完全に開放されているので、通気性に困らない
- 軽くて扱いやすく、掃除や移動も楽
という、実用面でのメリットがしっかりあります。
「見た目」と「中身の環境」、どちらを優先するか。これは飼育者それぞれの価値観だと思いますが、私は後者を選びました。トロ舟や衣装ケースは、その価値観に合う現実的な選択肢だと感じています。
まとめ
長くなりましたが、最後に私の考えを整理しておきます。
私はリクガメのケージ選びにおいて、何よりも広さを重視しています。その理由は、運動量の確保だけではありません。広さがあることで、環境に自由が生まれるからです。
暖かい場所と涼しい場所。明るい場所と暗い場所。開けた場所と隠れられる場所。広いケージにはそれらを共存させる余裕があり、リクガメ自身が「今いたい場所」を選べるようになります。私はこの「生体が環境を選べること」を、飼育の中でとても大切にしています。
もちろん、自然界の環境を完全に再現することはできません。どれだけ広いケージを用意しても、本物の草原や荒野には遠く及ばない。それは分かっています。
それでも、少しでも自然界に近づけたい。せめて「選べる余地」だけでも残してあげたい。その思いで、私は広さにこだわってきました。
誤解のないように書いておくと、私は自作ケージが正解だとは思っていません。ガラスケージでも、トロ舟でも、衣装ケースでも、その環境の中でリクガメが快適に過ごせているなら、それが一番です。
大切なのはケージの種類ではなく、「この環境はうちのリクガメにとってどうなのか」と考え続ける姿勢なのだと思います。
私自身、今の飼育環境が完成形だとはまったく思っていません。気になるところは今でもありますし、これからも変えていくつもりです。試行錯誤しながら、うちのリクガメにとってより良い環境を探し続けていきたい。そう考えています。
この記事が、ケージ選びで迷っている方や、今の飼育環境を見直したい方にとって、何かしらのヒントになれば嬉しいです。


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