🐢 この記事の結論(先に要点だけ)
結論:甲長20cmのリクガメでも、幅は90cm以上必要です。体の大きさではなく、温度差を作る距離が要るからです。
60cmでは足りない理由:バスキングスポットは35〜40℃、涼しい側は28℃前後。この差を幅56cm(60cm水槽の内寸)で作るのは無理で、ケージ全体が同じ温度になります。暑いときの逃げ場がなくなります。
何を買うか:四方が透明なガラスケージは勧めません。幼体はトロ舟やランチュウ水槽、成体は自作の木製ケージが良いと考えています。
詳しくは:成体の実物/60cmでは逃げ場が作れない/何を買うか/置き場所の作り方
甲長20cmなのに、幅90cmは大げさに思えます
リクガメのケージを調べると、どこにも「幅90cm以上」と書いてあります。でも、こう思いませんでしたか。
甲長20cmなら、60cmのケージでも3倍あるじゃないか。
この感覚は、間違っていません。むしろ自然です。
飼う前に調べている段階では、その動物が最終的にどれくらいになるのかが想像できません。
ケージが小さければ安く済みます。本体の値段も、床材の量も違います。少しでも小さく収めたいと思うのは当然のことです。
そのうえで書きます。60cmでは足りません。理由は「リクガメが大きいから」ではありません。ここを説明します。
これが甲長20cm・体重2kgの実物です
まず、話の前提になる「大きさ」を共有させてください。
我が家のギリシャリクガメは、甲長20cm・体重2kgです。
ここで注意してほしいのは、甲長は「甲羅だけ」の長さだということです。歩いているリクガメは首を前に伸ばし、四肢を張り出します。実際に場所を取る長さは、甲羅の数字よりひとまわり大きくなります。
そして2kgという重さも、想像しにくいと思います。2Lのペットボトル1本ぶんです。手のひらに乗るサイズをイメージしていた方には、かなり違って見えるはずです。
ちなみに一般的な60cm水槽は、外寸が60cmでも内寸は56cm前後しかありません。歩けるのはその範囲です。
60cmケージでは、逃げ場が作れません
ここが、この記事でいちばん伝えたいところです。

必要なのは「35〜40℃」と「28℃前後」の両方
リクガメは自分で体温を作れません。暖かい場所と涼しい場所を行き来して、自分で体温を調整します。
我が家の数値はこうです。
| 場所 | 温度 |
|---|---|
| バスキングスポット(暖かい側) | 35〜40℃ |
| 低温側 | 室温と同じ(冬・昼で28℃以上) |
この10℃前後の差を、1つのケージの中に作るのが目標になります。
熱が集まる範囲だけで、20cm以上あります
バスキングライトの熱は、真下の一点だけに落ちるわけではありません。
我が家では、ライトから熱が集まる位置までの距離を20cm以上取っています。つまり暖かい側は、点ではなく20〜30cmの「エリア」として存在します。
この設置の考え方は、「リクガメにバスキングライトはいらない」と思った人へで数値つきで紹介しています。
幅56cmでは、ケージ全体が同じ温度になります
ここで計算が合わなくなります。
- 60cm水槽の内寸は約56cm
- そのうち暖かいエリアが20〜30cm
- 残りは30cmほど
この30cmが「涼しい側」になるはずですが、30cm離れただけでは10℃も下がりません。すぐ隣で35〜40℃の熱が出ているからです。結果として、ケージ全体が中途半端に温かい状態になります。
バスキングライトの記事に、こう書きました。
室温が28℃あっても、ケージ内が全部28℃なら、リクガメは体温を上げる場所を持ちません。
60cmケージで起きるのは、この裏返しです。ケージ内が全部30℃を超えていれば、リクガメは体温を下げる場所を持ちません。暑くても逃げられない。これが、狭いケージのいちばんの問題です。
広さが必要な理由は、リクガメの体が大きいからではありません。温度差をつけるための「距離」が要るからです。ここが伝わると、幅を削るのがなぜ危ないのかが分かると思います。
保温器具の選び方はリクガメの保温器具の選び方にまとめています。
餌皿を置くと、歩ける場所はさらに減ります
温度の問題に加えて、もう一つ単純な話があります。
ケージの中には餌皿が入ります。リクガメが甲羅を乗り上げても倒れない程度の大きさが要るので、直径15〜20cmは占有します。幅56cmのケージなら、それだけで3分の1近くです。
残ったスペースで、リクガメは方向転換もしなければなりません。歩いて、向きを変えて、また歩く。この余白がないと、活動量そのものが落ちます。
なお我が家では、水入れは常設していません。その理由はリクガメに水入れを置いていない理由で書いています。置く場合は、さらに面積を取ることになります。
実際の配置はリクガメケージのレイアウトを紹介|乾燥系リクガメで意識しているポイントで写真つきで紹介しています。シェルターを置くかどうかの考え方はリクガメのシェルターは不要|転倒リスクと運動量を飼育歴14年が解説をご覧ください。
必要な幅は「甲長の5倍」|20cm×5=100cm
ここまでの話を、目安の数字にするとこうなります。
- 幅:甲長の5倍以上
- 奥行:甲長の2〜3倍以上
甲長20cmなら幅100cm。「90cm以上」と言われるのは、この計算からです。感覚的な話ではなく、暖かいエリア+移動距離+涼しいエリアを足すと、それくらいになるということです。
参考までに、我が家の現在のケージは幅120×奥行65×高さ70cmの自作です。そして飼育を始めてから今まで、いちばん小さいときでもトロ舟の80型を使っていました。
この80型、「80」という数字から小さく感じますが、実寸は外寸92.4×61cm・内寸85×54.8cmです。結局いちばん狭かった時期でも、幅85cmは確保していたことになります。
では何を買うか|ガラスケージは勧めません
サイズの話が済んだので、次は「何を買うか」です。
爬虫類ケージといえばガラス製のものが定番ですが、私はリクガメにはおすすめしていません。理由は2つあります。
四方が透明だと、落ち着ける場所がなくなる
四面がガラスだと、リクガメからは360度すべてが見えます。人が歩けば見え、他のペットが通れば見える。常に何かが視界に入る状態です。
側面が板で塞がれた木製ケージやトロ舟なら、横からの視線が遮られます。ケージそのものが大きなシェルターとして機能するので、隠れ家を別に置かなくても落ち着ける環境になります。
空気がこもりやすい
もう一つが通気です。
四面をガラスで囲った構造は、空気の逃げ道が上部に限られます。熱と湿気がこもりやすく、床材が乾きにくくなります。乾燥系のリクガメにとっては、これが甲羅や皮膚のトラブルにつながることがあります。
自作なら、側面に通気口を開ける位置を自分で決められます。トロ舟は上が完全に開いているので、そもそもこもりません。
幼体のうちは、トロ舟かランチュウ水槽
幼体からお迎えする場合は、いきなり120cmを用意しなくて大丈夫です(理由は後述します)。
私はトロ舟から始めましたが、今から幼体を迎えるならランチュウ水槽を選ぶと思います。60×45×30cmという規格があり、通常の60cm水槽(60×30cm)に比べて床面積が1.5倍あります。高さが低いので上から手を入れやすく、様子も見やすい。
■ポチップ:トロ舟80型/ランチュウ水槽 600ワイド
成体には、自作の木製ケージ
大きくなったら、木製ケージの自作が最も条件に合います。
- 置き場所に合わせて寸法を決められる(規格に縛られない)
- 側面が塞がるので落ち着く
- 通気口の位置を自分で設計できる
- 断熱性が高く、保温しやすい
私はこれまで3回作っています。作る前に考えておきたいことは、リクガメの自作ケージで失敗しないために|作る前に考えたいポイントにまとめました。
DIYが難しければ、トロ舟のままでも問題ありません。見た目は素っ気ないですが、広さと掃除のしやすさは十分です。
置き場所が取れないなら、床ではなく棚を使う
「必要なのは分かった。でも置く場所がない」という方へ、実際にやっている方法を書いておきます。
私はケージを床に直置きせず、スチールラックに載せています。キタジマのボード棚、幅150×奥行60×高さ210cmの4段タイプです。
■写真をここに挿入(ラック全景。4段・ケージが載っている状態/挿入後この行を削除)
ケージ置き場と収納棚が、1台にまとまる
正直に書くと、ラックはケージより一回り大きくなります。「床面積が減る」わけではありません。変わるのは、その面積の使われ方です。
ケージを床に直置きすると、その場所はケージのためだけに死にます。上に物は置けず、下は隙間があるだけです。
棚に載せれば、空いた段がそのまま収納になります。私は下の段に、床材のストックや予備の器具といった飼育用品のほか、キャンプ用品や釣り具も置いています。
つまり、もともと必要だった収納棚とケージ置き場が、1台にまとまる。爬虫類専用の家具を部屋に増やさずに済みます。
飼育を始めると、床材の袋、サーモスタット、予備の電球、温浴に使う容器と、用品はどんどん増えます。置き場所の問題は、ケージよりむしろ用品の方で起きます。
耐荷重は必ず確認する
棚に載せるなら、確認してほしいのが耐荷重です。
ケージ本体に、床材とリクガメが加わります。幅120cmクラスになると相当な重さになるので、汎用の棚では棚板がたわむことがあります。
キタジマのボード棚は1段あたり350kgまでの仕様です。支柱にL型アングルを使った業務用の作りなので、この点は考えなくてよくなります。見た目も無骨で、爬虫類や塊根植物にはよく合うと思っています。
そして5cmピッチでカットに対応しているので、置き場所を実測してから、その寸法に合わせて注文できます。既製品に部屋を合わせるのではなく、部屋に棚を合わせられる。置き場所が決まっている人には、これがかなり効きます。
奥行は60cmをおすすめします。ケージの後ろに余裕ができ、電源コードやサーモスタットのセンサーを逃がせるからです。
■ポチップ:キタジマ スチールラック ボード棚
ベビーだけは例外です
ここまで「広い方が良い」と書いてきましたが、ひとつだけ例外があります。

ベビーからのお迎えの場合、いきなり広すぎるケージに入れるのは勧めません。理由は3つです。
- 温度を保ちにくい:空間が広いほど熱は逃げます。体力のないベビーには、温度のムラが負担になります
- 餌にたどり着けないことがある:動ける範囲が広すぎると餌皿の場所を覚えられず、食べる量が落ちることがあります
- 異変に気づきにくい:食べているか、動いているか。狭い方が目が届きます
ベビーは、少しの環境の乱れでも崩れてしまいます。私が14年の飼育で唯一落としてしまったのもベビーでした。原因はケージの広さではありませんが、それだけ余裕がないということです。
ですから幼体のうちはトロ舟やランチュウ水槽で始めて、成長に合わせて広げていくのが現実的です。棚を先に用意しておけば、ケージだけ入れ替えれば済みます。
なお、ある程度育った個体からお迎えするなら、最初から幅90〜120cmで問題ありません。
まとめ|広さが要るのは、体ではなく温度差のため
最後に整理します。
- 甲長20cmでも幅90cm以上が要る。理由は体の大きさではなく温度差を作る距離
- 必要なのは35〜40℃と28℃前後の両方。幅56cmでは作り分けられない
- 狭いケージの本当の問題は、暑いときに逃げられないこと
- 目安は甲長の5倍。20cmなら100cm
- 四方が透明なガラスケージは落ち着かない・こもるので勧めない
- 幼体はトロ舟・ランチュウ水槽、成体は自作の木製ケージ
- 置き場所がなければ棚に載せる。耐荷重と奥行60を確認する
「甲長20cmなのに90cmも要るのか」という感覚は、私も分かります。ですが必要なのは、リクガメが自分で暑さから逃げられるだけの距離です。そう考えると、90cmは大げさな数字ではありません。
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