はじめに
リクガメを飼い始めてから、ずいぶんいろいろな情報に触れてきました。飼育書を何冊も読み、先輩飼育者さんのブログを読み漁り、ショップの店員さんに質問し、SNSで他の方の飼育環境を眺めたり。情報源によって言うことが違うこともあって、最初の頃はけっこう混乱したのを覚えています。
そうやって試行錯誤を続けるうちに、自分なりに「ここは大事にしたいな」と思うポイントが、少しずつ固まってきました。
今回はその中から、現在の私が特に意識している4つのポイントを紹介してみたいと思います。
先にお伝えしておくと、この記事は「正しい飼育方法」を解説するものではありません。ましてや「これが正解です」と言いたいわけでもありません。あくまで一飼育者の考え方の共有です。「こういう見方もあるのか」くらいの気持ちで、気楽に読んでいただけたら嬉しいです。
私の考え方の軸はとてもシンプルで、
「自然界ではどうなっているのか」
を想像してみること。飼育環境はどうしても人工的なものになります。だからこそ、リクガメが本来暮らしている環境に思いを馳せることが、私にとっての判断基準になっています。この記事も、その視点を軸に書いていきます。

ポイント1:リクガメの温度管理は「勾配」を意識する
リクガメは変温動物です。自分で熱を生み出して体温を保つ哺乳類とは違い、周囲の温度に合わせて体温が変化します。
では自然界のリクガメはどうやって体温を調整しているのかというと、自分で「場所を移動する」ことで調整しています。日が昇れば日なたに出て体を温め、暑くなれば木陰や岩陰、巣穴に移動して涼む。一日の中で、自分にとって心地よい温度の場所を探して動き回っているわけです。
そう考えると、ケージ内の温度を一律に保つことよりも、「暖かい場所」と「涼しい場所」の両方を用意してあげることのほうが大切なのではないか、と私は思うようになりました。いわゆる温度勾配というものです。
バスキングスポットでしっかり体を温められる場所があり、その一方でクールダウンできる場所もある。どこにいるかをリクガメ自身に選んでもらう。温度を「与える」のではなく、「選べる環境を用意する」という感覚に近いかもしれません。
うちのカメも、朝はライトの下でじっとして、温まると餌を探しに動き出し、午後はケージの隅の涼しい場所で休んでいたりします。その姿を見ていると、自分で体温を調整しているんだなと実感します。
ポイント2:リクガメには紫外線だけでなく「明るさ」も大切
リクガメ飼育において紫外線が重要だということは、よく知られていると思います。カルシウムの代謝に関わるビタミンD3の生成に必要で、紫外線ライトは多くの飼育者さんが導入しているはずです。私ももちろん使っています。
ただ、私はもう一歩進んで、可視光線、つまり環境全体の「明るさ」も大事なのではないかと考えるようになりました。
リクガメをよく観察していると、視覚をかなり使って生活していることに気づきます。餌を探すときも、目で見て、色を確かめるようにして近づいていく。赤い花や鮮やかな緑の葉に反応する様子を見ると、色を認識しているんだろうなと感じます。
ここで自然界との比較です。リクガメが本来暮らしているのは、遮るもののない太陽の下です。晴れた日の屋外の明るさは、照度でいえば室内とは桁違いです。人間の目は優秀なので、室内でも「十分明るい」と感じてしまいますが、実際に測ってみると、自然界の明るさと比べてかなり暗い可能性があります。
人間にとっての「明るい部屋」が、リクガメにとっては「薄暗い環境」かもしれない。そう考えると、紫外線量だけをチェックして満足するのではなく、ケージ全体の明るさにも目を向けたほうがいいのではないか、というのが今の私の考えです。
明るい環境にしてから、心なしかうちのカメの動きが活発になったような気もしています。もちろん個体差もあるでしょうし、気のせいかもしれません。ただ、視覚で世界を捉えている生き物にとって、明るさが行動に影響しないとは考えにくいな、と思っています。

ポイント3:リクガメの餌は「多様性」を意識する
餌については、特定の野菜やフードをおすすめするつもりはありません。私が意識しているのは、何を与えるかよりも「多様性」です。
自然界のリクガメは、決まったメニューを食べているわけではありません。その日その場所に生えている草、花、ときには果実など、季節や環境によって様々な植物を口にしていると考えられます。栄養バランスを計算して食べているわけではなく、結果として多様なものを食べることでバランスが取れているのだろうと想像しています。
なので私は、野草、葉物野菜、市販フードなどを組み合わせながら、できるだけ色々なものを食べてもらうことを心がけています。季節によって手に入る野草が変われば、それも自然なことだと捉えています。
人間だって、毎日まったく同じものだけを食べ続ける生活はしませんよね。栄養面でも気持ちの面でも、いろいろなものを食べるほうが健やかでいられる気がします。リクガメも同じなのではないか、というのが私の考えです。

餌になる代表的な野草です。
もちろん、与えてはいけないものや注意が必要な野草はありますので、そこは調べたうえで。そのうえで「幅を持たせる」ことを意識しています。
ポイント4:空気の流れ ― 私が一番意識していること
さて、ここからがこの記事で一番書きたかった部分です。温度や紫外線、餌に比べると話題に上がることが少ない気がするのですが、私は「空気の流れ」をかなり意識しています。
自然界には、常に空気の動きがある
外に出てみると、わかりやすい強風の日もあれば、ほとんど無風に感じる日もあります。でも、まったく空気が動いていない瞬間というのは、実はかなり少ないと思います。そよ風程度であっても、自然界の空気は常にゆるやかに入れ替わり続けています。
一方で、飼育環境はどうでしょうか。ケージというのは基本的に閉鎖的な空間です。保温のために覆いをすれば、なおさら空気は動かなくなります。温度と湿度は管理されているけれど、空気そのものはずっと同じ場所に留まっている。そういう状態になりやすいのが飼育環境だと思います。
私が気にしているのは「空気の淀み」
ここで誤解のないように書いておきたいのですが、私が気にしているのは、湿気がこもるとか、臭いがするとか、カビが生えるとか、そういう衛生面の話が主題ではありません。もちろんそれらも大事ですが、私が意識しているのはもっと感覚的な、「空気の淀み」そのものです。
自然界で生きる生き物にとって、光・温度・空気の流れというのは、本来切り離せないワンセットの要素なのではないか、と私は考えています。太陽が昇れば明るくなり、温度が上がり、空気が動く。自然界では、それらが常に連動して変化しています。

飼育環境では、光はライトで、温度はヒーターで再現しようとします。それなら空気の流れだけ完全に止まっていていいのだろうか、と。完全に空気が止まった環境よりも、ゆるやかにでも空気が流れている環境のほうが、自然界の状態に近いのではないか。これが、私が空気の流れを意識している理由です。
空気を動かすために、特別な設備は必須ではない
では具体的に何をしているのかというと、正直なところ、大げさなことは何もしていません。
例えば、
- 部屋の換気をこまめにする
- サーキュレーターで部屋全体の空気をゆるやかに動かす
- 風の抜けがいいケージを使う
- 部屋全体の空気循環を意識する
といったあたりです。ケージに直接強い風を当てる必要はないと思っていて、あくまで「空気が淀まない程度に、ゆるやかに動いている」状態を目指しています。
誤解してほしくないのですが、私は特定の機材を紹介したいわけではありません。サーキュレーターを買いましょう、という話でもありません。大事なのは道具ではなく、「この空間の空気は流れているだろうか」と意識を向けることそのものだと思っています。意識さえあれば、方法は各家庭の環境に合わせていくらでも工夫できるはずです。
まとめ:リクガメの自然界を知ろうとする姿勢
ここまで、温度勾配、明るさ、餌の多様性、空気の流れという4つのポイントを書いてきました。
最後に、少しだけ正直な気持ちを書かせてください。
リクガメの飼育は、決して簡単ではないと思います。丈夫で長生きな生き物というイメージがあるかもしれませんが、本来は日本とはまったく違う環境で進化してきた生き物です。その暮らしを人工的な空間で再現しようとするのですから、簡単なはずがありません。
そして、これだけ偉そうに書いておきながら、私自身も今なお試行錯誤の真っ最中です。今回紹介した4つのポイントにしても、「これだけやっておけば大丈夫」というものでは決してありません。数年後の私は、また違うことを言っているかもしれません。それくらい、飼育に「完成」はないと感じています。
それでも、迷ったときに立ち返る場所として、私には「自然界ではどうなっているのだろう」という問いがあります。飼育環境は、どこまでいっても人工的な環境です。完璧に自然を再現することはできません。だからこそ、せめて自然界を知ろうとする姿勢だけは持ち続けたい。答えそのものよりも、その姿勢のほうが大切なのではないかと、最近は思うようになりました。
今回の記事だけでは、とても語り切れなかったことがたくさんあります。床材のこと、照明の選び方、餌のバリエーション、ケージのレイアウトなど、それぞれに自然界と照らし合わせながら考えてきたことがあるので、今後少しずつ発信していけたらと思っています。
この記事が、これからリクガメを迎える方や、すでに一緒に暮らしている方にとって、何かひとつでも参考になる部分があれば嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
関連記事として、地中海種の床材について考えた記事や飼育の初期費用をまとめた記事もあわせてどうぞ。生態の基礎情報はWikipedia(外部サイト)も参考になります。


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