ケージのまわりをコバエが飛んでいる。殺虫剤を撒きたいけれど、生き物がいるから使えない。この相談をかなりの数見かけますが、返ってくる答えはたいてい「掃除をしましょう」で終わっています。
先に書いておきます。爬虫類のケージは、家の中でもっともコバエが湧きやすい場所です。構造的にそうなっています。理由が分かれば、対策の優先順位も決まります。
そもそも、コバエはなぜ湧くのか
意外に思われるかもしれませんが、「コバエ」という名前の虫はいません。小さいハエをまとめてそう呼んでいるだけで、実際には別々の虫です。そして種類によって湧く場所が違います。
| 種類 | 主な発生源 |
|---|---|
| ショウジョウバエ | 生ゴミ、食べ残し |
| ノミバエ | 生ゴミ、動物性の腐敗物 |
| キノコバエ | 鉢植えの湿った土(有機質の用土) |
| チョウバエ | 排水口や排水管の汚れ |
発生源はバラバラに見えますが、共通しているものが3つあります。湿り気、有機物、温度。この3つが揃った場所に湧きます。逆に言えば、どれか1つを断てば湧きません。
爬虫類のケージは、3つとも揃っています
| 条件 | ケージの中にあるもの |
|---|---|
| 湿り気 | 水入れ。こぼれた水で床材が濡れる |
| 有機物 | 床材、糞、食べ残し |
| 温度 | 保温器具。24時間、25〜30℃前後 |
台所の生ゴミと比べてみてください。生ゴミは冬になれば冷えます。ケージは一年中暖かい。掃除をしているのに湧くという相談が多いのは、そもそもの条件が良すぎるからです。
湿ったヤシガラは、鉢植えの土と同じです
もう一度、先ほどの表を見てください。キノコバエの発生源は「鉢植えの湿った土」でした。ヤシガラはヤシの繊維、つまり有機質の用土そのものです。
そこに水がこぼれて、乾かないまま放置される。これは水はけの悪い鉢植えを、暖かい部屋に置いているのと変わりません。床材が悪いのではなく、濡れていることが問題です。
だから、発生源の順位はこうなります
3条件のうち「温度」は消せません。生体に必要だからです。「有機物」も完全には消せません。床材も糞もなくせない。消せるのは「湿り気」だけです。
- 水入れのこぼれた水と、濡れた床材
- 餌虫のケージ
- 餌の食べ残し
14年リクガメを飼い、ゼノガマの繁殖もしていますが、爬虫類部屋が発生源になったことはほとんどありません。この順で潰しているからだと考えています。
① 水入れ|最大の原因はここです
賛否が分かれる話から書きます。我が家はリクガメのケージに水入れを置いていません。
水入れは必ずこぼれます。乗り上げる、中に入って歩き回る、ひっくり返す。そのたびに床材が濡れます。しかも中の水は糞や床材が混ざって汚れていく。汚れた水が、湿った有機質の床材にかかる。3条件がこれで完全に揃います。
掃除をしても湧くという状況の多くは、ここが原因ではないでしょうか。拭いても、水入れがある限り翌日には元に戻るからです。
ただし、水分補給は別の方法で必ず行ってください
ここは読み飛ばさないでください。水入れを外すだけなら、ただの脱水リスクです。
我が家では野菜と野草から水分を摂らせています。霧吹きで野菜に水をかけて、水分量を増やすこともあります。温浴はしていません。
そしてこの方法が成立しない条件があります。マズリのような人工餌を、乾燥したまま主食にしている場合です。餌から水分が入らないので、水入れを外すと水切れのリスクが高くなります。分かれ目は「人工餌がメインかどうか」ではなく「ふやかしているかどうか」です。乾燥のまま与えているなら、水入れは外さないでください。
外す前に、まず観察してみてください
おすすめしたいのは、いきなり外すことではなく、自分のリクガメが水入れからどれくらいの頻度で水を飲んでいるかを見ることです。地中海リクガメなら、思ったより飲んでいないことに気づくと思います。
飲んでいないなら、その水入れは水分補給の役に立っておらず、湿り気を供給しているだけかもしれません。
なおこれは地中海リクガメの話です。ケヅメリクガメやヒョウモンガメなど、他の種は飼育経験がないので分かりません。水入れを置かない飼育については、別の記事で詳しく書く予定です。
水入れを置かない飼育と、水分が足りているかの確認方法は「リクガメが水を飲んでいるところを見たことがない、という不安について」に詳しく書きました。
外せない場合に考えたいこと
種類や飼い方によっては、水入れを外せない場合もあります。その場合でも、狙うところは同じです。こぼれた水が、床材を濡らしたまま放置される状態を作らないこと。
床材の上に直接置かない、こぼれてもすぐ気づける位置にする、水は毎日換える。「水入れがあるかどうか」ではなく「濡れた床材が放置されているかどうか」が本質です。
② 餌虫のケージ|密閉された好条件
活餌を使っている方は、こちらが最大の発生源になります。ストックケースの中は暖かく、水入れがあり、野菜が入っていて、糞も溜まる。3条件がすべて揃った密閉空間です。
我が家はプラケースに卵パックを入れて管理しています。コオロギは水切れに弱いので小鳥用の水入れを入れますが、そのままだと溺死します。そこで飲み口に切ったスポンジを詰めています。スポンジが水を含むので、落ちて死ぬことがありません。デュビアは水入れなしで、与える野菜の水分だけで足りています。
死んだコオロギを、すぐ捨てる
活餌の管理で、いちばん大事なのがこれです。
コオロギは必ず一定数落ちます。死骸を放置すると、そこからコバエが発生します。暖かい場所にある動物性の腐敗物は、ノミバエの発生源そのものです。
餌をやるついでに、死んでいる個体を見つけたらその場で取り除く。それだけで発生はかなり抑えられます。コオロギに与える餌自体も清潔に保ってください。しなびた野菜くずの入れっぱなしは、それ自体が発生源になります。
③ 食べ残しと床材
順位が3番目なのは、乾いていればそこまで湧かないからです。
正直に書くと、私は泊まりのある仕事をしているので食べ残しの撤去が翌日になることがあります。それでも湧かないのは、床材が乾いているからだと考えています。①で水入れを外したことが、ここに効いています。
床材の交換は2か月に1回、全部入れ替え。ただし適切な頻度は、ケージの大きさと頭数によって変わります。
ケージの外にも発生源はあります
正直に書きます。私が虫を湧かせた原因は、ケージではなく餌袋でした。
レップカルのリクガメフードを使っていた頃、ジッパーがしっかり閉まっていませんでした。気づいたときには袋の中で虫が湧いていた。ショウジョウバエです。台所の生ゴミに来る、あの小さいやつ。爬虫類特有の虫ではありませんでした。
ジッパーは閉めたつもりで閉まっていないことがあります。指で端から端までなぞって確認してください。ケージをどれだけきれいにしても、餌袋が発生源なら意味がありません。
そもそも爬虫類部屋が原因ではないことも多いです。我が家で家の中にコバエが出るときは、たどっていくと風呂場などの水回りが原因であることがほとんどです。梅雨に増えるのも、季節の問題であって飼育環境の問題ではありません。排水口、三角コーナー、観葉植物の受け皿。種類によって発生源は違います。
すでに湧いてしまっている場合
ここまでは「湧かせない」話でしたが、いま飛んでいる方もいると思います。
まず知っておいてほしいのは、飛んでいる成虫を追いかけても終わらないということです。目に見えている成虫は結果でしかなく、本体は発生源にいる幼虫だからです。1匹叩いても、そこから次が出てきます。
やることは、上に書いた順番で発生源を潰していくことです。水入れまわりの湿り、餌虫のケース、食べ残し、そして餌袋。1つずつ確認していけば、たいていどれかが当たります。
そして結果が出るまでに少し時間がかかります。発生源を断っても、すでに育っている個体は羽化してくるからです。数日で判断せず、1〜2週間は様子を見てください。減っていく方向に向かっていれば、発生源は当たっています。
殺虫剤とコバエ取りについて
「コバエ取りの成分は、爬虫類に影響しないのか」。ここで悩んでいる方が多いようです。
私の答えを書きます。私は使いません。置き型のコバエ取りも使ったことがありません。理由は単純で、成分が生体にどう影響するのか、私には判断できないからです。安全だと言い切る根拠も、危険だと言い切る根拠も持っていません。
「使うな」と言っているのではありません。私は使っていない、というだけです。そして使わずに済んでいます。湧く条件を作っていないからです。
まとめ
- コバエが湧く条件は「湿り気・有機物・温度」の3つ
- 爬虫類のケージは3つとも揃っている。消せるのは湿り気だけ
- 濡れたヤシガラは水はけの悪い鉢植えと同じ環境になる
- 水入れを外すなら水分補給の代替が必須。人工餌メインなら外さない
- 活餌では死んだコオロギをすぐ捨てる。水入れにはスポンジを詰める
- 餌袋のジッパーと、水回りなどケージ外の発生源も疑う
コバエは、湧いてから追いかけると終わりが見えません。条件を1つ消すほうが、結果的に早い。そして消せる条件は、湿り気だけです。




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